ダックスフンドの魅力のひとつは、スムース・ロングヘアー・ワイヤーヘアーという3つの被毛タイプが存在し、それぞれに異なる外見と個性を持つことです。しかし、被毛タイプが異なれば、お手入れの方法も頻度も変わります。
愛犬のグルーミングは、見た目を美しく保つだけの行為ではありません。皮膚トラブルの早期発見、血行促進、寄生虫のチェック、さらには飼い主との信頼関係を深めるコミュニケーションの時間でもあります。この記事では、3つの被毛タイプ別のブラッシング方法から、シャンプー、爪切り、耳掃除、歯磨きまで、ダックスフンドのお手入れに必要な知識を網羅的に解説します。
被毛タイプ別ブラッシングガイド
スムースヘアーのブラッシング
スムースヘアーのダックスフンドは、短く滑らかな被毛を持ち、3タイプの中で最もお手入れが簡単です。しかし、「短毛だからブラッシング不要」というのは誤解です。
頻度: 週に1〜2回
使用するブラシ: ラバーブラシ(ゴム製のブラシ)または獣毛ブラシが適しています。スリッカーブラシやピンブラシは皮膚を傷つける可能性があるため、スムースヘアーには向いていません。
ブラッシング方法:
- ラバーブラシで全身を毛の流れに沿ってやさしくマッサージするようにブラッシングします
- 死毛(抜け毛)が浮き上がるので、獣毛ブラシやグルーミンググローブで取り除きます
- 最後に柔らかい布で体を拭くと、被毛にツヤが出ます
スムースヘアーは短毛ですが換毛期(春と秋)にはかなりの量の毛が抜けます。換毛期はブラッシングの頻度を毎日に増やし、抜け毛の除去を徹底しましょう。
ロングヘアーのブラッシング
ロングヘアーのダックスフンドは、絹のようにしなやかな長い被毛が特徴です。耳、胸、お腹、脚の裏側、尾に豊かな飾り毛があり、3タイプの中で最もお手入れに手間がかかります。
頻度: 毎日〜2日に1回
使用するブラシ: スリッカーブラシとコーム(くし)の併用が基本です。ピンブラシも使えます。また、抜け毛除去にはアンダーコート除去ブラシが非常に効果的です。
ブラッシング方法:
- まずコームで全身の毛の流れを確認し、毛玉がないかチェックします
- 毛玉がある場合は、無理に引っ張らず、指でほぐしてからコームを通します
- スリッカーブラシで毛の根元から丁寧にブラッシングします。特に耳の裏、脇の下、内股、尾の根元は毛玉ができやすいので入念に行います
- 飾り毛の長い部分はコームで仕上げます
- 換毛期にはアンダーコート除去ブラシを使い、不要な下毛を効率的に取り除きます

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ワイヤーヘアーのブラッシング
ワイヤーヘアーのダックスフンドは、硬くゴワゴワした上毛と、柔らかい下毛の二重構造の被毛を持ちます。日本ではスムースやロングに比べて数が少ないですが、独特の風格ある外見が魅力です。
頻度: 週に2〜3回
使用するブラシ: スリッカーブラシとコームの併用。加えて、ワイヤーヘアー特有のケアとして「ストリッピング」用のストリッピングナイフが必要です。
ブラッシング方法:
- スリッカーブラシで全身をブラッシングし、抜け毛と汚れを除去します
- コームで仕上げ、毛玉がないか確認します
- 2〜3ヶ月に1回、プロのトリマーによるストリッピング(手で古い被毛を引き抜くケア)を行うのが理想的です
ストリッピングについて: ワイヤーヘアーの被毛を美しく健康的に保つためには、バリカンではなくストリッピングが推奨されます。バリカンで刈ると被毛の質感が変わり、本来の硬くて撥水性のある被毛が柔らかくなってしまいます。ストリッピングは専門的な技術が必要なため、ワイヤーヘアーに精通したトリマーに依頼することをおすすめします。
シャンプーの選び方と正しい洗い方
シャンプーの頻度
ダックスフンドのシャンプーは、月に1〜2回が目安です。頻繁に洗いすぎると、皮膚のバリア機能を担う必要な皮脂まで落としてしまい、乾燥肌やフケの原因になります。特にスムースヘアーは皮脂が少ないため、洗いすぎには注意が必要です。
ただし、散歩で泥だらけになった場合や、体臭が気になる場合は、部分的にぬるま湯で流すか、ウェットティッシュ型のグルーミングシートで拭き取る方法もあります。
シャンプーの選び方
ダックスフンドのシャンプー選びで重要なポイントは以下のとおりです。
- 犬用であること: 人間用シャンプーは犬の皮膚には刺激が強すぎます。犬の皮膚のpHは6.5〜7.5で、人間(pH4.5〜5.5)とは異なるため、必ず犬用を使用してください
- 低刺激・天然成分配合: オートミール、アロエ、ティーツリーなどの天然保湿成分が配合されたものが安心です
- 無香料または弱い香り: 犬の嗅覚は人間の1000倍以上。強い香料は犬にとってストレスになります
- 被毛タイプに合ったもの: ロングヘアー用(絡まり防止成分配合)、敏感肌用など、愛犬の状態に合わせて選びましょう
シャンプーの手順
- ぬるま湯(36〜38℃)で全身をしっかり濡らす: シャワーヘッドを体に密着させると水の音が軽減でき、犬のストレスを減らせます。顔は最後に濡らし、耳の中に水が入らないよう注意します
- シャンプーを泡立ててから体につける: 直接原液をかけると皮膚を刺激する可能性があります。手のひらで泡立ててから、首→背中→お腹→足→尾の順にやさしくマッサージするように洗います
- すすぎは洗いの2倍の時間をかける: シャンプーの残留は皮膚トラブルの最大の原因です。特に脇の下、内股、指の間、耳の付け根はすすぎ残しが起きやすいので入念に流します
- タオルドライ後、ドライヤーで完全に乾かす: 生乾きは雑菌の繁殖や皮膚炎の原因になります。ドライヤーは低温設定で、毛の流れに沿って当てます。ロングヘアーの場合は、乾かしながらコームで梳かすと美しい仕上がりになります

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爪切りのコツ|ダックスフンドの爪の特徴
なぜ爪切りが重要なのか
爪が伸びすぎると、歩行時に爪が床に当たって不自然な姿勢になり、関節や腰に余計な負担がかかります。ダックスフンドは腰のトラブルを抱えやすい犬種であるため、爪の管理は見た目以上に重要な健康管理です。
爪切りの頻度と目安
2〜3週間に1回が目安です。床を歩いたときに「カチカチ」と音がしたら、爪が伸びすぎているサインです。散歩でアスファルトを歩く犬は自然に爪が削れるため、頻度が少なくて済む場合もあります。
安全な爪切りの方法
- 明るい場所で行う: 白い爪の犬はピンク色の部分(血管と神経が通る「クイック」)が透けて見えます。黒い爪の場合は少しずつ切り進め、断面の中心に白い点が見え始めたらストップします
- ギロチンタイプまたは電動ヤスリを使用: 小型犬にはギロチンタイプの爪切りが使いやすいです。爪切りが苦手な犬には、電動ヤスリ(グラインダー)で少しずつ削る方法もあります
- 少量ずつ切る: 一度に大きく切ろうとせず、1〜2mmずつ慎重に切り進めます
- 出血した場合: 止血パウダー(クイックストップ)を常備しておきましょう。万が一出血しても、止血パウダーを爪の断面に押し当てれば数分で止まります
爪切りを嫌がる犬への対処法
子犬の頃から足を触られることに慣らしておくのが理想です。成犬で爪切りを嫌がる場合は、まず足を触る→爪切りを見せる→爪に当てるだけ、というステップを踏み、各ステップでおやつを与えて「爪切り=いいこと」と学習させましょう。どうしても難しい場合は、動物病院やトリミングサロンに依頼するのも賢い選択です。
耳掃除|垂れ耳ダックスフンドの重要ケア
ダックスフンドは垂れ耳の犬種です。垂れ耳は外見上の可愛らしさがある一方で、耳の中の通気性が悪く、湿気がこもりやすいという構造的な問題があります。これにより、外耳炎や耳ダニなどの耳のトラブルが起きやすくなります。
耳掃除の頻度
週に1回は耳の中をチェックし、汚れがあれば掃除します。シャンプーの後は耳の中に水分が残りやすいため、必ず乾いたコットンで水気を拭き取りましょう。
正しい耳掃除の方法
- 犬用イヤークリーナーを使用: 人間用の綿棒は耳道を傷つけたり、汚れを奥に押し込んだりするリスクがあるため、使用を避けてください
- クリーナーを数滴耳の中に垂らす: 耳の付け根をやさしくマッサージして、クリーナーが耳道全体に行き渡るようにします
- 犬が自然に頭を振るのを待つ: これにより奥の汚れが出てきます
- コットンで見える範囲の汚れを拭き取る: 耳の入り口付近だけを丁寧に拭きます
こんな症状があれば動物病院へ
- 耳から異臭がする
- 黒っぽい、または黄色い耳垢が大量に出る
- 耳を頻繁に掻く、頭を振る
- 耳の内側が赤く腫れている
これらの症状は外耳炎や耳ダニ感染の可能性があります。自己判断で市販薬を使うのではなく、獣医師の診察を受けてください。
歯磨きの基本|歯周病予防のために
犬の歯周病は3歳以上の犬の約80%に見られると言われており、ダックスフンドも例外ではありません。歯周病は口腔内の問題にとどまらず、細菌が血流に乗って心臓や腎臓に悪影響を及ぼす可能性があることが獣医学的に明らかになっています。
歯磨きの頻度と方法
理想は毎日: 難しい場合でも週に3回以上を目標にしましょう。
使用するもの: 犬用歯ブラシ(指サック型が扱いやすい)と犬用歯磨きペースト。犬用歯磨きペーストはチキン味やレバー味など、犬が好む風味で作られているため、歯磨きを受け入れやすくなります。人間用の歯磨き粉は犬に有害な成分(キシリトールなど)が含まれている場合があるため、絶対に使用しないでください。
手順:
- まず歯磨きペーストを指につけて舐めさせ、味に慣れさせます
- 指にガーゼを巻いて、歯の表面をやさしく擦ります
- 慣れてきたら歯ブラシに切り替え、歯と歯茎の境目を重点的に磨きます
- 奥歯の外側は歯石がつきやすいため、特に丁寧に磨きましょう
デンタルケアの補助グッズ
歯磨きが難しい日は、デンタルガムやデンタルトイを活用しましょう。ただし、これらはあくまで補助的なケアであり、歯磨きの代わりにはなりません。また、硬すぎるガムや骨は歯の破折(折れ)の原因になるため、愛犬の体に合った硬さのものを選んでください。
肛門腺のケア
肛門腺(肛門嚢)は、肛門の4時と8時の位置にある分泌腺で、マーキングに使われる独特の匂いのある液体を分泌します。通常は排便時に自然に排出されますが、小型犬は自然排出がうまくいかないケースが多く、定期的なケアが必要です。
肛門腺が溜まっているサイン
- お尻を床に擦りつけて歩く(スクーティング)
- 尾の付け根を気にして舐める・噛む
- お尻周辺から強い異臭がする
肛門腺絞りの頻度
月に1回程度のチェックが目安です。自分で行う方法もありますが、力加減が難しく、無理に絞ると肛門腺を傷つける恐れがあります。慣れないうちは、シャンプー時にトリミングサロンで行ってもらうか、動物病院で処置してもらうのが安心です。
季節ごとのケアポイント
春(3〜5月)
換毛期の始まりです。冬毛が大量に抜けるため、ブラッシングの頻度を上げましょう。ノミ・ダニの活動が活発化する時期でもあるため、予防薬の投与を開始(または継続)してください。花粉による皮膚のかゆみが出る犬もいるので、散歩後に足やお腹を拭く習慣をつけましょう。
夏(6〜8月)
高温多湿の日本の夏は、皮膚トラブルが起きやすい季節です。シャンプー後は完全に乾かすことが特に重要になります。散歩は早朝と夕方の涼しい時間帯に行い、アスファルトの温度に注意してください。長毛タイプはサマーカットを検討してもいいですが、紫外線から皮膚を守る被毛の役割もあるため、極端に短くしすぎないようにしましょう。
秋(9〜11月)
2回目の換毛期です。冬に向けて被毛が生え替わるため、春と同様にブラッシングの頻度を上げます。乾燥が始まる季節でもあるので、保湿系のシャンプーやコンディショナーの使用を検討しましょう。
冬(12〜2月)
乾燥による皮膚のかゆみやフケが出やすい季節です。暖房器具のそばで長時間過ごすと皮膚が乾燥しやすくなるため、加湿器の使用がおすすめです。散歩後は足の裏を確認し、乾燥でひび割れがないかチェックしましょう。肉球クリームでの保湿ケアも効果的です。
よくある質問(FAQ)
Q. ダックスフンドはトリミングサロンに連れて行く必要がありますか?
スムースヘアーはトリミングの必要はありませんが、爪切りや肛門腺絞りのためにサロンを利用する飼い主は多いです。ロングヘアーは飾り毛のカットや足裏の毛のカットでサロンを利用するのが一般的です。ワイヤーヘアーはストリッピングが必要なため、定期的なサロン通いが推奨されます。目安として、ロングヘアーは2〜3ヶ月に1回、ワイヤーヘアーも同様の頻度が適切です。
Q. 子犬のグルーミングはいつから始めればいいですか?
できるだけ早い時期から始めることをおすすめします。子犬期(生後8週齢頃〜)から、短時間のブラッシングや足を触る練習を開始しましょう。最初は数秒だけ触って褒める・おやつをあげるところから始め、徐々に時間を延ばしていきます。シャンプーはワクチン接種が完了してから(生後4ヶ月頃)が安全です。
Q. 皮膚に赤みや発疹が見られたらどうすればいいですか?
まず最近使ったシャンプーや食事に変更がなかったか確認しましょう。ダックスフンドはアレルギー性皮膚炎を起こしやすい犬種です。軽度であれば様子を見てもいいですが、かゆがってひどく掻く、脱毛がある、膿が出ているなどの場合はすぐに動物病院を受診してください。自己判断で人間用の薬を塗るのは絶対に避けてください。
まとめ
ダックスフンドのお手入れは、被毛タイプによってアプローチが大きく異なりますが、「定期的なブラッシング」「適切な頻度のシャンプー」「爪切り」「耳掃除」「歯磨き」という基本の5つは、どのタイプにも共通して必要なケアです。
特にダックスフンドは垂れ耳による耳のトラブルと、小型犬に多い歯周病のリスクが高いため、耳と歯のケアは怠らないようにしましょう。また、お手入れの時間は愛犬の体の変化に気づくチャンスでもあります。普段と違うしこり、皮膚の変色、異常な抜け毛など、病気の初期サインをいち早く発見できるのは、日々のグルーミングを丁寧に行っている飼い主だけです。
愛犬のお手入れを「面倒な作業」ではなく、「愛犬とのコミュニケーションの時間」として楽しむ意識を持てば、グルーミングはきっと飼い主にとっても愛犬にとっても大切なひとときになるはずです。




